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運命の色

 山口百恵さんらが演じた「赤いシリーズ」は、とても人気のあった昭和のテレビドラマだ。42年前の4月23日に始まったのが「赤い運命」▼伊勢湾台風で行方不明になった赤ちゃんが施設で育つ。身元を示す証拠品が入れ替わり…。順天堂大順天堂医院(東京)の新生児取り違え問題で、このドラマを思い出した方も多いのではないか▼先日の夕刊に、51年前の当事者男性のインタビューが載っていた。「写真だけでも見たい。亡くなっているならお墓参りだけでもしたい」。実の親に会いたいという訴えは胸を打つ▼新生児取り違えはベビーブームの頃にはまれにあったとも言われる。ドラマや映画でよく題材になるのは、多くの人が「もし当事者だったら」と自分に引きつけるからだろう。近年でも2013年の邦画「そして父になる」が注目された▼医院側は謝罪し、カルテで相手方をほぼ特定できたものの、今の平穏な生活を考えて伝えないことにしたという。再発防止はもちろん、情報開示の在り方が問われている▼大なり小なり、人は運命に翻弄(ほんろう)される。それを受け止めてどんな色にするかは、本人次第かもしれない。「他人と分かって育ててくれて、感謝しかない。母が元気なうちに実の子と会わせてあげたい」。男性の言葉に救われる思いがする。

[京都新聞 2018年04月24日掲載]

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