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広がるスマート農業

収量拡大、省力化を実現
温度や湿度、光量などを自動制御できるクニエダの大型バラ園芸システム。年間を通じて最適な栽培環境を保つ(守山市欲賀町)
温度や湿度、光量などを自動制御できるクニエダの大型バラ園芸システム。年間を通じて最適な栽培環境を保つ(守山市欲賀町)
滋賀県が「スマート農業」普及のため整備したICT園芸ハウス(近江八幡市安土町)
滋賀県が「スマート農業」普及のため整備したICT園芸ハウス(近江八幡市安土町)

 ロボット技術やICT(情報通信技術)などの先端技術を活用する「スマート農業」が、滋賀県内で広がりつつある。農家の担い手不足が深刻さを増す中、大規模生産や省力化を実現させ競争力を高める「もうかる農業」として注目を集める。次世代農業の現場をのぞいた。

 守山市欲賀町の水田地帯に建つガラス張りの白い巨大ハウス。切り花を専門とする近畿最大のバラ園芸業者クニエダが、農家10数戸から借りた休耕田約3万平方メートルの敷地に約16億円を投じ、2017年1月に完成させた国内初の大型バラ園芸システムだ。

 冷暖房を使った温度と湿度の管理▽遮光カーテンや補光システムによる採光の調整▽植物の光合成に欠かせない二酸化炭素(CO2)濃度―をすべてコンピューターで一元管理し、きめ細かく調整する。

 同社が50年間培ってきた栽培ノウハウもデータに反映させながら、高さ約7メートル、広さ約1万8千平方メートルの巨大空間を、年間を通じて同じ環境に保っている。

 2代目の國枝武夫会長(68)が、バラ生産が盛んなオランダに10年以上通い続け、現地の建設会社と協力して導入した最先端技術だ。「栽培に最適な春の陽気を一年中再現できる。天候に左右されない『植物工場』だ」と胸を張る。

 花が計算通りに生育するため6週間ごとに作業員が切り落とし、1株から年間8回収穫する。導入1年目で生産量はシステム導入前と比べ2倍以上伸びており、将来的に年間400万本の収量確保を目指す。

 作業効率の向上を目指し、移動しながら収穫できる台車や自動で薬剤散布するロボット、成長段階や養分の吸水量を加味して自動で肥料を混ぜた水分を補給するシステムも備える。

 國枝会長は「人手不足を考えれば、作業の効率化を進めるしかない。施設を巨大化させればロボットは導入しやすい」と話す。切り取った花を大きさや堅さで選別する機械も年内に導入する予定だ。

 スマート農業の普及は、県も後押しする。4月中旬、県はクニエダと同様のシステムを取り入れたICT農業研修施設を、約8千万円かけて近江八幡市の県立農業大学校に整備した。九州を除く西日本では初めてで、全国でも4例目だ。

 施設では、新規就農を目指す若者らが消費者ニーズが高く参入しやすいトマト栽培を学ぶ。県農業経営課は「ICTを活用したきめ細やかな栽培は品質が向上し、収量も増える。経営が強化され、担い手確保にもつながる」と期待する。

 ICT化の波は、農地の集約化が進む稲作にも押し寄せる。農業法人を中心に、GPS(衛星利用測位システム)付き自動直進田植え機や、小型無人機ドローンを使った農薬散布を導入する動きが出ている。

 県は今後も技術革新が進むと見て、2年前から普及指導員へのICT研修に力を注ぐ。7月には県内の農業者を対象に、初めてスマート農業の先進事例を学ぶフォーラムも開く。

【2018年04月22日掲載】