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米輸入制限緩和  少なすぎる「適用除外」

  「適用除外」といっても、安心するにはほど遠い状況だ。
 米商務省が鉄鋼の輸入制限で日本や中国、ドイツなど5カ国からの一部製品を適用除外とした。3月に決めた鉄鋼とアルミニウムの輸入制限で、適用されない品目が決まったのは初めてだ。
 ただ、今回認められたのは7社の42件にすぎない。11社が申請した56件は認められなかった。
 企業からの除外申請は2万件を超えている。商務省が判断したのは計100件に満たない。
 安全保障上の脅威を理由に輸入制限を発動したトランプ政権の姿勢は、何ら変わっていないと見るべきだろう。
 すでに中国やEUなどは報復関税で対抗する姿勢をみせている。輸入制限が結果的に米国民の生活に跳ね返る可能性があることをトランプ氏は自覚するべきだ。
 今回の適用除外は、外国製品に頼らざるを得ないものが対象とみられる。ロス商務長官は「消費者に近い産業の需要を考慮した」と、米国民への影響に言及した。
 共和党内には、メキシコなどの報復関税が米国農家に被害を与えるなど、輸入制限が地域経済に影響を及ぼすことへの懸念もある。
 11月の中間選挙を控え、こうした支持層の声に配慮したとの見方も出ている。世界の貿易秩序を揺るがす輸入制限の発動も、その一部の適用除外も、根底には選挙対策があるということなのか。極めて危うい行動である。
 トランプ氏は18日、中国から輸入する年間2千億ドル(約22兆円)相当の製品に10%の追加関税を課す検討を指示した。その3日前に同500億ドル(約5兆5千億円)相当の輸入品に25%の関税をかけると表明したが、中国が同規模の報復措置を発表したためだ。米中の報復は泥沼化する恐れがある。
 米国の強硬策を改めさせる具体策は今のところ見いだせない。
 日本の鉄鋼製品は米国で造れない特殊なものが多いという。適用除外の審査が長引けば企業業績にも響きかねない。日本政府としては、今後も除外対象の拡大を働きかけていくしかないだろう。
 経済産業省が今週発表した2018年版不公正貿易報告書は、保護主義的な通商政策をとる米国を名指しで批判した。また、世界貿易機関(WTO)への提訴も視野に問題解決を図ると明記した。
 こうした姿勢を現実の日米折衝でどこまで貫けるか。日本政府は国際ルールを尊重する意思をしっかり主張しなければならない。

[京都新聞 2018年06月23日掲載]

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