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武器携行命令  不都合な現実説明せよ

 憲法との整合性が疑われかねない、当時の状況がまた一つ明らかになった。
 2016年7月、南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣中の陸上自衛隊部隊が、通常は武器を持たない隊員も含め全員に武器携行命令を出していたことが分かった。現地で政府軍と反政府勢力の大規模な戦闘が起きた際、銃撃戦の拡大に備えて宿営地内の武器庫から小銃を取り出し、実弾を装塡(そうてん)したという。
 隊員の一人は「戦争だった。彼らが宿営地内に入ってくれば部隊が全滅すると思った」と語っている。極めて緊迫した状況を裏付ける生々しい証言だ。
 国造り支援の途中で戦闘が再燃した南スーダンPKOは、「紛争当事者間の停戦合意」などからなる日本のPKO参加5原則、平和憲法との整合条件を満たさないのではないか-。当時、国会で何度も議論となり、検証の必要性が指摘されてきた。だが17年5月まで5年間に及んだ派遣の総括はいまだ不十分で、政府は部隊撤収の理由を、現地の治安悪化ではないと説明し続けている。
 世界の紛争とPKOの任務が複雑化する中、日本の国際平和貢献はどうあるべきか。必要不可欠な議論が進まないのは、政府が不都合な現実から逃げ、国民への情報開示に後ろ向きだからではないのか。
 南スーダンでは13年12月にも首都ジュバで戦闘が起きたが、安倍政権はいずれも法的な意味での「武力紛争」には当たらないとして、PKOの実績づくりを優先してきた。16年7月の大規模戦闘時の陸自の日報の開示を求められた防衛省は「廃棄した」としていたが、後に日報が残っていたことが判明し、今になって防衛相が釈明に追われている。
 日報は「戦闘」があったことを報告している。しかし重要な部分が黒塗りで、部隊対応の詳細は公表されないままだ。防衛省・自衛隊幹部の隠蔽(いんぺい)体質は根深く、イラク復興支援部隊の日報をめぐる問題にも表れている。
 安全保障関連法で自衛隊の役割が広がり、他国の戦闘に巻き込まれたり、誤って現地市民を傷つけたりする懸念が増した。そのリスクと結果責任を負うのは隊員だけでなく、国民全体である。
 「国民には(派遣地の)本当のことを知ってほしい」という南スーダン派遣隊員の言葉は重い。国会にも、自衛隊明記の改憲発議より先にやるべきことがある。

[京都新聞 2018年04月24日掲載]

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