毎年7月1日から31日まで行われる祭のうち、街の賑わいがピークに達するのが16日の宵山までの3日間と山鉾巡行。多くの人が街に繰り出します。中でも混雑する山鉾町エリアを歩くと、ひと際人々が集まっている町家を所々で見かけます。人々が一目見ようとしているのは、美しく展示された屏風や京都の日本画家たちの絵の数々…。普段は蔵に眠っている品々を各家が飾っているのです。祇園祭が別名「屏風祭」とも呼ばれるのは、この期間限定の屏風飾りが行われるためで、京町家に暮らす人々の家宝が、町行く人の目を楽しませてくれます。

 屏風飾りには、窓などに飾られた美術品を通りから眺めたり、玄関奥の部屋全体に飾られているのを中まで入って見学できたりなど、様々な展示スタイルがあります。もともとは江戸時代半ば、蔵に仕舞ってある屏風を、虫干しもかねて展示するようになったのが始まりです。明治時代中頃以降盛んになり、単に秘蔵の屏風を見せるだけでなく、置き物や生け花などとの組み合わせ、空間美を楽しんでもらうようになりました。今で言うインテリアコーディネートです。明治時代末から大正時代にかけては、美術品の展覧会のような扱いで新聞のトップ記事を飾っていたほどでした。最盛時には、山鉾町近辺だけでなく、市内一帯に屏風飾りが広まったことは、今ではご存じの方も少ないかもしれません。

 繊維業界が好景気だった大正時代、京都の富豪たちの間では、画壇で活躍する人気画家たちに屏風の製作を依頼することが流行しました。現在、屏風祭で見られる作品に、四条派を中心とする近代日本画の大家のものが多いのはそのためです。まさに贅沢な趣味の極みが、このオリジナル屏風だったわけです。しかし時代は流れ、最盛期には数えきれないほどだった屏風飾りを行う町家も今では20軒あまりに。現在も続けている町家は、貴重な存在となっています。