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スポーツ観戦券不正転売 不健全な取引、社会で認識を

運動部 山本旭洋
フィギュアスケートNHK杯の会場前で、当日のチケットを求めるファンら(2017年11月、大阪市港区・市中央体育館)
フィギュアスケートNHK杯の会場前で、当日のチケットを求めるファンら(2017年11月、大阪市港区・市中央体育館)

 木枯らしが吹いた昨年11月。「券種問いません」「チケット買います」。フィギュアスケートNHK杯会場の大阪市中央体育館周辺は、購入できなかった入場券を求めて紙ボードを掲げる人であふれていた。北海道から訪れた会社員女性(52)もその1人。「インターネットでは何倍にも跳ね上がって手が出せない」と来場者に交渉し、余ったショートプログラムの券を定価で譲ってもらっていた。

 音楽イベントなどの入場券をネットで高額転売するダフ屋行為が、スポーツ業界にも波紋を広げている。「チケットの価値はファンが決める」と転売容認の声がある一方、不当な買い占めと価格のつり上げによって観戦機会が奪われている現状は見逃せない。

 フィギュアをはじめ、国内外で注目度が高いスポーツの観戦チケットは購入時の競争率が高く、転売仲介サイトで取引される価格も高騰している。同サイトでは、NHK杯のスタンドS席(8千円)が17倍超で落札され、プロ野球ドラフト会議の無料観覧席の当選メールも高額出品されていた。日本野球機構は昨年10月、同会議や日本シリーズなどの転売券を無効とする声明を出した。日本スケート連盟は、スマートフォンを活用した電子チケットを採用。他にも1回の購入枚数を制限し、購入者の手元に届く時期を試合直前にするなど対策を図るが、不正転売は後を絶たない。

 「取り締まる法令根拠がない」。京都府警担当だった2007年、捜査員がぼやいていたのを思い出す。当時、京都を含む8府県の条例にダフ屋行為を禁じる規定がなかった。西京極総合運動公園(京都市右京区)では、安く仕入れたJリーグ京都サンガFCの観戦券を、正規価格を超えない範囲で上乗せして売りさばくダフ屋が横行。府警は1946年施行の物価統制令の適用を検討したが、時代錯誤だとして検挙を見送った。

 現在は、ダフ屋行為の禁止条項が条例に追記されたが、規制対象となる「公共の場」にネット空間は想定されていない。東京五輪・パラリンピックが迫る中、大会組織委員会は、国や超党派の議員連盟に規制強化の法整備を要請。同連盟は、ネットダフ屋に法の網を張ろうと営利目的での入場券の転売などを禁じる法案提出に向けて動いている。

 不当な大量購入を防ぐシステムの構築も欠かせない。同組織委は、紙のチケットが記念になるとの声もあるため、全面導入は「難しい」としつつ電子チケットを一部で採用する方針。急用などで不要になった券を定価で譲り合える仕組みも整えるという。

 ただ、ルールづくりだけでは限界がある。購入者に不要な出費を強制し、主催者側に空席のリスクを与える不正転売は、健全な取引ではないという認識を社会で共有すべきだ。フェア精神が求められているのは選手だけではない。

[京都新聞 2018年2月28日掲載]

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