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宮津特養虐待疑い 入所者家族の不信感拭えず

宮津支局 只松亮太郎
施設を運営する「香南会」の説明会に出席する入所者の家族ら(2月25日、宮津市由良・安寿の里)
施設を運営する「香南会」の説明会に出席する入所者の家族ら(2月25日、宮津市由良・安寿の里)

 「家族としては到底納得できない。お母さんがどうしてこんなことになったのかしっかり説明してほしい」

 宮津市由良の特別養護老人ホーム「安寿の里」で入所者17人への虐待が疑われている問題で、2月に入所中の母親(91)に骨盤骨折が見つかった男性(66)=与謝野町=は憤る。京都府はこの女性の骨折についても、ずさんな介護による虐待とみている。行政と施設の主張が平行線をたどる中、取材をした入所者家族の不信感や地域の不安は拭い去れていない。

 男性の母親は約2年半前、安寿の里に入所した。認知症で会話はほとんどできないが、施設内を活発に歩き回ることが日課だった。骨折と分かった後、すぐに手術を受けたが、自力で歩くことは困難になり今後は車いす生活を強いられるという。現在は、町内の病院で車いすの操作方法や乗り降りの練習をしている。男性は「歩くことは母親の唯一の健康的な部分だった。それが奪われたのは、本人も残念に思っているだろう」と悔しさをにじませる。

 施設の近くに住む山田次世さん(73)は「施設ができてから、地域に人通りが増えた」と話す。今回の問題で「地域のイメージがどうなるか」と困惑し「早く解決してまた活気のあるまちに」と願う。

 安寿の里を巡っては、昨年12月に入所者の90代女性がベッドから転落した際、職員が適切な対応を怠ったとして宮津市が「虐待」と認定。その後も入所者に不自然なけがが続いたことから、府は2月16日、施設を運営する社会福祉法人「香南会」(高知県)に介護保険法に基づいて改善勧告を出した。

 一方、香南会側は全職員や入所者への聞き取り調査の結果などを踏まえ「職員の介護技術が未熟だったことによる事故」と釈明した。

 ただ、高齢者虐待防止法では身体的、介護の放棄・放任(ネグレクト)、心理的、性的、経済的の五つを虐待の定義としているが、実際に介護にあたる現場の職員たちがこの定義の内容をどこまで認識していたのかも疑問が残る。

 厚生労働省のまとめによると、2015年度に全国の施設で408件あった高齢者虐待のうち、発生原因(複数回答)の約65%を占めるのが「教育・知識・介護技術の問題」というデータもある。

 立命館大の小川栄二教授(社会福祉学)は「社会の一部にある『介護はだれでもできる仕事』という風潮や賃金の低さなどが影響し、職員が定着しにくく、しっかりした育成ができていない部分がある」と指摘。「虐待や事故が起こった際、問題の原因を職員個人の資質や倫理感のせいにすれば同じようなことがまた起こる」と懸念する。

「私たちは真実を知りたいだけ」。男性ら入所者家族の気持ちは、当事者たちに届いているだろうか。

[京都新聞 2018年3月7日掲載]

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