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京都府知事選福山氏善戦 支持広げた「市民共闘」

報道部 吉永周平
告示日に気勢を上げる福山氏(中央)。脱原発や安保法廃止の運動に取り組む市民団体のメンバーが駆け付けた=3月22日、京都市中京区・市役所前
告示日に気勢を上げる福山氏(中央)。脱原発や安保法廃止の運動に取り組む市民団体のメンバーが駆け付けた=3月22日、京都市中京区・市役所前

 京都府知事選は前復興庁事務次官、西脇隆俊氏が新人対決を制した。弁護士の福山和人氏は終盤に猛追し、保守府政転換後の共産推薦候補で最高得票率となる善戦だった。

 福山陣営を担当していて印象に残ったのは、共産党や総評系労組でつくる民主府政の会に、脱原発や平和運動、環境保護に草の根で取り組む市民団体が加わり、共闘を模索した点だ。京都は市民運動が盛んだが、共産が強い基盤を持つ影響で市民団体の政治参加は相対的に小さかった。福山陣営に入った人には共産に批判的な人や、初めて選挙に関わる人も多かった。「共産隠し」と批判も出たが、共産が選挙後に「京都の市民運動のほぼ全ての潮流が合流した」と総括したのも、あながち大げさとは言えないと思う。

 共闘の背景に、3・11以降の脱原発運動や、2015年の安全保障関連法成立後に地道に続けられてきた廃止闘争がある。関西電力前の抗議デモや京都市役所前の「19日行動」が代表例だ。これらの運動に共産や労組、市民団体が参加し、連帯を強めた結果、民主府政側からの選対への参加要請に市民団体が応じた。

 加計学園問題で政権を批判する前文部科学省事務次官、前川喜平氏に市民団体が出馬を打診したのが象徴的だ。元キャリア官僚への要請は民主府政ではありえない発想だろう。

 化学反応も起きた。「(保守府政の)継承か転換か」の二者択一からの脱却を掲げた福山氏は、「継承しつつ変化させる」と訴えた。大型公共事業を全否定しないなど従来と一線を画す姿勢を市民団体は支持した。だが、演説会の動員など選挙戦で主軸となる共産や総評の一部は「対立軸を明確にすべき」と反発した。大きな亀裂にならなかったのは、街角談議のような演説をはじめ福山氏の「候補者力」が求心力で働いたと思う。

 出遅れは最後まで響いた。公約は多くが前回候補と同じで、演説で訴えた山陰近畿自動車道の早期開通が入っていないなど熟度が不足していた。出馬表明が告示直前になった野党系候補が制した新潟県知事選を目標にしたが、新潟は直近の参院選で野党共闘が進んでいた点で、立憲民主党との連携が不発に終わった京都と違いがあった。終盤は府政批判を増やして対決色を強めたことで「是々非々」という当初の独自色は薄まった。

 ただ、福山氏の訴えや共闘路線が一定支持を得たのは間違いない。特に京都市内は得票差が2万5千しかなく、2年後の市長選が注目される。福山氏は弁護士として労働や貧困の問題に関わり、個別事件の解決は対症療法にすぎないと考えて出馬を決意した。市民団体は路上で声を上げ続ける中で政治への関与を考えるようになった。双方の来歴が選挙戦を通じてシンクロしているように見えた。この流れが今後の選挙で続くか注視したい。

 西脇陣営から見れば、公文書改竄(かいざん)や日報隠蔽(いんぺい)問題は想定外の逆風となった。だが、相乗りの説明を尽くしたとは言えず、公約は具体性を欠いた。福山氏が、組織力で圧倒的な差がある西脇氏を追い上げたのは、「敵失」も大きく寄与したのだろう。

[京都新聞 2018年4月18日掲載]

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