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五輪ボランティア 厳しい条件、負担軽減を

運動部 田中俊太郎
平昌五輪の競技会場で大会ボランティアとして来場者のチケットを確認する京都外国語大の李さん(左)=2月、韓国・江陵
平昌五輪の競技会場で大会ボランティアとして来場者のチケットを確認する京都外国語大の李さん(左)=2月、韓国・江陵

 2020年東京五輪・パラリンピックの大会ボランティアの募集が9月から始まる。大会ボランティアは12年ロンドン五輪で「ゲームズメーカー」と呼ばれ、成功の鍵となった。今年2月に韓国の平昌五輪を取材した際も現地で奮闘するボランティアの姿が印象に残っている。自国開催の東京大会を盛り上げるのはアスリートだけではない。

 「あいさつが返ってくるとうれしい。寒さにも耐えられる」。平昌五輪スピードスケート会場となった江陵オーバルの入り口。冷たい風が吹く屋外でチケット確認のボランティアをしていた京都外国語大生の李奈里さん(21)=京都市左京区=は充実の表情で語った。事前研修を含めて約1カ月の現地滞在も「楽しくて、あっという間だった」。

 20年東京大会の組織委員会が募集する大会ボランティアは8万人。3月末に公表した募集要項案では20年4月1日時点で18歳以上で、10日以上活動でき、全ての研修に参加できることなどが条件になっている。業務内容も多岐にわたる。観客や大会関係者の「案内」、海外の要人や選手団などの接遇を担当する「アテンド」といった運営に関わる9分野に分かれている。東京都も、旅行客の観光・交通案内などを担う都市ボランティア3万人を募る。

 ただ、担い手の確保には課題が多い。最も高いハードルになりそうなのが金銭的な負担だ。期間中は飲み物や食事の一部、ユニホームなどが提供されるが、東京までの交通費や宿泊費は自己負担となり、宿泊先も自身で確保しなければならない。「やりがい」だけでは解決できない現実的な問題だ。休暇をとってボランティア活動をすることに対して、企業や学校の理解も進んでいるとは言い難い。平昌五輪に参加し、春から就職活動する京都外大生の一人は「東京五輪も参加したいけど、就職した後は難しそう」と残念がっていた。

 平昌五輪では寒さや活動環境への不満から登録ボランティア1万5千人のうち約2千人が離脱した。現地で取材中、ボランティアからは移動バスの本数が少なく、宿泊施設に差があるという話を聞いた。担当業務によっても負担は異なり、屋内での業務に比べ、厳寒の屋外での誘導などは過酷に見えた。

 慣れない海外取材だった平昌五輪で、ボランティアの力は大きな助けになり、温かい気遣いは心にしみた。もてなしを受けた選手や来場者も同じ思いではなかったか。

 東京五輪まであと2年。厳しい応募条件には批判が上がる。ボランティア希望者の多くが関われるよう負担軽減策を講じ、応募の間口を広げてほしい。みんなが楽しめ、満足できる祭典でなければならない。誰かの自己犠牲の上にしか成り立たない大会では、たとえ多くのメダルが取れたとしても成功とは言えない。

[京都新聞 2018年5月30日掲載]

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