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文化財の「活用」 目先の利益追求を危惧

報道部 日山正紀
囲碁本因坊戦の対局やクラシックカーの展示などあらゆる文化財活用の取り組みが行われている二条城。集客イベントの内容には賛否両論ある(京都市中京区)
囲碁本因坊戦の対局やクラシックカーの展示などあらゆる文化財活用の取り組みが行われている二条城。集客イベントの内容には賛否両論ある(京都市中京区)

 文化財や文化行政の取材で近年よく聞く言葉が、「活用」だ。国は観光振興や地域活性化を狙って文化財の商業利用の旗を振る。文化財が集積し、文化庁の移転先となる京都では、府や市がこれに呼応して文化財建造物でのイベント開催などに余念がない。だが目先の利益を求めるあまり、保護や調査・研究が後回しになるのではないか。有識者や所有者は懸念を募らせている。

 3日、東山区で開かれた市文化財保護審議会の部会。市は、市所有文化財をモデルに活用をさらに進め、「保存と活用の好循環」を促す方針を示した。代表格の二条城(中京区)では、施設内で集客イベントを仕掛け、2017年度の有料入城者が243万9千人と過去最高を記録。18年度にも囲碁本因坊戦の対局やファッションショーなどを繰り広げたことを紹介した。

 これに対し、委員の下坂守京都国立博物館名誉館員は「歴史的な事実や調査研究を根底に置かない活用は、浮つく」と活用先行の流れに違和感をあらわにした。活用策が明治維新150年など集客行事に偏っている点を危惧し、別の委員は「半身の構えで注視する」と眉をひそめた。

 活用推進の前にすべきことがあると指摘する有識者は多い。京都観光の大きな魅力は、平安京建都以来1200年の歴史の足跡をたどることができ、建物や美術工芸品、祭礼といった有形無形の文化財を数多く残す点にある。だが、歴史を総合的に調査研究し、発信する機能や拠点があまりにも貧弱だ。識者の中には、政令市の多くが持つ歴史博物館を公的に整備をするべきだとの意見が根強い。

 実際、市の関連施設は古文書を扱う歴史資料館、埋蔵文化財中心の考古資料館、平安京の復元模型を常設する平安京創生館(京都アスニー1階)などがあるが、市内に分散し、来場者も限られている。府の京都文化博物館や国の京博はあるが、京都の歴史文化に特化した施設ではない。

 京都の文化行政に詳しい識者は「京都の通史や精神文化など基礎的で重要なことを伝える施設は教育や観光にも役立ち、一過性のイベントより意義深い。歴史文化の中核拠点のない『文化首都』などあり得ない」と嘆く。

 歌道宗家・冷泉家当主の冷泉為人さんが5日、文化財関連の会見で切々と訴える一幕があった。「文化予算は主要国に比べて相当少ない。これを前提に『文化財を活用して保存継承せよ』と旗振りするのは、文化財に行政は金を出さず、民間の自助努力に任せると宣言しているに等しい」。文化財活用を通じ、「観光立国」「文化首都」を目指す政府や府・市。予算や事業内容など行政の適切な関与の在り方が問われている。

[京都新聞 2018年7月11日掲載]

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