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17年目の伏線回収

 この夏、異変があったのは地球環境だけではなかった。制作費わずか300万円の映画「カメラを止めるな!」が異例のヒットとなり、上映館が2館から全国200館近くに拡大した▼関西でいち早く公開された京都市内の映画館で見ると、客席はぎっしり。拍手も起きた。ゾンビが出てくる映画だが思わぬ展開になる。「とにかく笑える」「伏線回収がすごい」と絶賛されている▼ゾンビ映画は怖いというだけでなく、社会の実態や人々の心を敏感に反映する-。評判になったミステリー小説にそんな話があった。この作品が映すものは、とてもユニークだ▼一躍脚光を浴びた上田慎一郎監督は長浜市木之本町の出身。中学の頃から父親のハンディカメラで級友らを撮っていたそうだ。こんなエピソードもある▼2001年夏。手作りのいかだで琵琶湖を横断しようと友人らと湖西から出発し、漂流して救助を求めた。「なにか、でっかいことしてみたい。高校2年生のまともな男なら、誰でも思ってることじゃないか」。自身のブログにそうある▼もちろん騒ぎはほめられたものではないが、青春映画のようであり、17年後の大ヒットの壮大な伏線にも思えてくる。地元ではこの秋、元映画館の料理店で凱旋(がいせん)上映会が開かれるという。盛り上がりを応援したい。

[京都新聞 2018年08月18日掲載]

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