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美術ユニット THE COPY TRAVELERS

複製と移動、現代の揺らぎ生む

3人の要素混ぜ、こだわり抽出

だるまやもちつき道具がひしめく店構えに引かれて撮影、作品化したまちのレンタル屋さん。コピーのワンダーランドだ(京都市下京区、さんきゅう・レンタル)
だるまやもちつき道具がひしめく店構えに引かれて撮影、作品化したまちのレンタル屋さん。コピーのワンダーランドだ(京都市下京区、さんきゅう・レンタル)

 立体を平面とともに撮影すれば、2次元も3次元も一つの平面の写真になる。大きな立体も小さな画面に収まる。イメージはコピー、複製、転写、移動を繰り返しながら、次元もサイズも解体され、ずらされていく。美術家加納俊輔、迫鉄平、上田良のユニット「THE COPY TRAVELERS(コピートラベラーズ)」はそんな現代の揺らぎを、コピー機やカメラ、スキャナーを駆使して実験的に表現する。

 ギャラリー16(京都市東山区)の展覧会「THE COPY TRAVELERSのA室」(27日まで 無料)は、コピーと移動を繰り返して生起した空間だ。

 四方の壁面に雑貨や人形、植木鉢などのイメージが貼り付いている。色彩や構成がかっこいい。よく見れば正面の大リーガーのピッチャーの人形は、右隣の壁にもある。ぼやけてスピード感が出ている。振り返ると別の角度でピッチャーが投げている。トランプで作ったタワーは隣り合う壁で角度が変わり、見える絵柄も違う。マー君の似顔絵を取り付けたボールもそれぞれの壁でゆがんだり、ぼやけたりしている。遠近、ずれ、何か微妙に変だ。

「THE COPY TRAVELERSのA室」  2019年 インスタレーションビュー
「THE COPY TRAVELERSのA室」  2019年 インスタレーションビュー

 3人は16のこの一室を、いったん5分の1サイズに縮小した模型を作り、内部にさまざまな物体を置いて撮影し、その写真を実際の壁面サイズに再び引き伸ばした。つまり16の一室を一度別の空間に縮小移動させ、そこでコピーして拡大再現している。5分の1を5倍すれば1になるはずだが、元の1とは何か違う。そのコピーの揺れ、ずれが面白い。

 加納は「ピッチャーが隣の壁の的を狙っているように見えたり、イメージが壁にくっつくことでしかできない関係性が生まれる。いろんな階層で撮影することで別々のものにつながりができたり、コラージュされたりする」。一見異なるイメージも階層や属性をはがせば、結びつき始める。

 3人は版画出身。加納と迫のアルバイト先に上田がよく遊びに来ていた。持ち寄った素材をコピー機で複写するうち、同じ機械なのに出てくるイメージが全く違うことに気付いた。「3人のものを混ぜたら、要素が複雑になって面白いかも」と、小冊子「ZINE(ジン)」を作り始めたのがきっかけだった。

「サンマルコ・サンセット」  2016年 インクジェットプリント
「サンマルコ・サンセット」  2016年 インクジェットプリント

 コピーのスキルも、自由度も上がった。日常のスナップ、野球カード、アイドルの写真、ドローイング、通りがかりに気になった店、会話の話題になった言葉を検索して現れた画像、雑誌の切り抜き、前回の展覧会、テレビの映像。コピーやスキャンを重ねながら、2次元も3次元も次々と一つの面に落とし込んだ。それらを折り曲げて立体化し再び撮影して平面に戻し、再度立体にしたり、映像にしたり。その間に、時事や遊びが忍び込んでくる。「そこにあったはずの素材が気付けばどんどん形が変わっていて、3人の要素が溶解しながらこだわっている部分が出ていた」

 何も考えずに小さいイメージを次々とコピー機で複写する作業を「コピササイズ」と名付けている。とりとめなく作りためたものは、いつかの何かの作品の素材になっていく。そうした素材を詰め込んだ今回の「A室」は、鑑賞者の撮影を自由にしている。そのイメージは3人の意図ともずれながら、SNSやネットでトラベルを続ける。

◇FUKUGAN GALLERY(大阪市)で「POSTERS」展に参加中。5月12日まで。月~水休。無料。

かのう・しゅんすけ(1983年~)

大阪府生まれ。京都嵯峨芸術大大学院修了。

さこ・てっぺい(88年~)

大阪府生まれ。京都精華大大学院博士後期課程満期退学。

うえだ・やや(89年~)

大阪府生まれ。京都精華大大学院前期課程修了。

【2019年04月27日掲載】