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和菓子の道具から学ぶ 代々受け継ぐ職人の宝

西陣らしい糸巻きに、鯛、宝尽くしなどの新旧の木型(京都市上京区・千本玉壽軒)
 祇園祭が近づくと、日差しが照り返し、白い大きな入道雲があらわれ、京の夏を感じます。涼しげな演出が欲しい時、疲れも癒やす和菓子は最適。特に、砂糖(和三盆など)と米粉、食用色素を合わせて、繊細な彫り物のある木型で型押しした干菓子は、季節のうつろいに応じてさまざまな形があり、その愛らしさとほんのりした甘さが何とも言えません。
 千本玉壽軒さんを訪ね、干菓子の製作を見学しました。干菓子を作るためには、いろいろな道具が使われますが、火事になったら、木型を持って逃げろと言われるくらいに、木型は、代々受け継ぐ菓子屋の財産です。
 木型の素材は、主に真桜や樫(かし)。堅木であり、干菓子を作る時の力作業にも耐え、型のすり減りが少なかったそうです。今は、樫や真桜がほとんど取れず、楢(なら)や樺(かば)桜、桂などで代用するようになりました。昔は、鯛(たい)や鶴亀(つるかめ)、月や水、草花、社寺仏閣の紋などご用命たびにあつらえたもので、その型は菓子職人の意匠のセンスが問われます。木型を専門に彫る職人さんは、京都市内に一人しかおらず、大変貴重な道具です。
 この木型の相棒のような道具を「鳴り板」もしくは「打ち板」とも言います。この板には、正式名がなく、和菓子屋さんによっては「馬」「下駄」「枕」などとも呼ぶようです。千本玉壽軒さんの場合、杉の赤身(芯に近い部分)だけで作られた足付きの「鳴り板」に、干菓子を型出しし、軽やかなリズムを変えることなく並べていきます。
涼しげな配色の干菓子「観世水」をつくる様子(京都市上京区・千本玉壽軒)
足付きの「鳴り板」に干菓子を型出しして並べてゆく(京都市上京区・千本玉壽軒)
 粉がつくと水洗いし、毎日使う板には、赤身の粘りと耐久性が最大限に生かされています。また、足付きは、重ねると運びやすいだけでなく、積み上げておくとそのままで、干菓子に適度な風通しを与えて乾燥させることになり、まったく無駄のない職人さんの知恵に脱帽しました。
 「便利な道具が増えましたが、木の道具は温度の微妙なさじ加減をしたり、余計な水分を吸い取ったりと菓子の出来具合に常にかかわっているんです」と、菓子職人の元島真弥さん。道具として使いこなすことにより、木も鍛えられていくようです。
 干菓子を打つことを「鳴る」と見立て、上品な和菓子に合わせ杉の木味もあっさりとコーディネート。手技の中にも京菓子の優美さと職人のこだわりを感じました。