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里山から学ぶ 山の荒廃、虫たちの受難

クヌギの木穴に、昼間は寝ているクワガタを探す平山貴也さん。
 夏休みに欠かせない昆虫採集。主役はクワガタやカブトムシでしょう。ところが、友人の子供に尋ねると「クワガタならスーパーにいるよ」と教えてくれました。クワガタやカブトムシなどの虫取り経験のない子どもたちが増えています。
 特にクワガタは子供から大人まで根強い人気があり、値段も大変高価です。クワガタ名人平山貴也さんは、全国でも有名な、この道四十年のベテラン。毎年、クワガタを追いかける平山さんに虫たちの行方をうかがうと「クワガタたちは、樹液を出すクヌギや楡(にれ)、コナラなどの雑木林に生息します。数年前から里山や雑木林が荒廃し、田んぼの畦(あぜ)木もなくなり、虫たちは山の奥のほうに追いやられていると思います」と答えが返ってきました。
 里山の雑木林でクヌギやコナラを伐採し、かつての日本人は、薪(まき)や炭などの燃料としてきました。それが、石油や石炭などの化石燃料に変わると、人の手が入らなくなり、管理も植樹もされなくなったのです。
 平山さんの案内で里山を歩きました。最近は、下草が刈り取られず山道がわかりづらかったり、手入れされていないために、木が生い茂り、林が薄暗くなっているそうです。伐採されたクヌギの根株を養分としてキノコが生え、またそれを養分としてクワガタの卵が成長します。樹液のよく出ているクヌギの大木の根元で、クワガタの死骸(がい)を見つけました。タヌキなどが餌にしたのでしょう。自然のサイクルを見せつけられた気がしました。
3年から5年生きるという神秘的なオオクワガタやノコギリクワガタ
自然のサイクルとはいえ、小動物に食べられてしまったカブトムシとクワガタの死骸
 「全国的に里山は手入れ不足。放置ゴミに悩まされ、山を閉鎖したり、間伐しないためにうっそうとしていたり。昔なら五月末から虫が騒ぎ出したのに、一カ月くらいずれてきています。気候の変化だけでなく、里山の環境悪化もあるのでしょう」と平山さん。確かに、広葉樹がある里山は、風が通り、なんだか明るく、葉っぱを透けて太陽の光がやわらかく注いでいました。スーパーでは、買えない虫取りの思い出。クワガタやカブトムシと共存できる環境を取り戻すには、身近な里山の豊かな財産を改めて見直すことが必要なのでしょう。