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檜舞台に学ぶ 天然の「木曽」光沢と香気

役者には檜舞台が似合う。舞台は檜にこだわって作られる。(いずれも京都市東山区・南座)
 気ぜわしい年の瀬に、南座の前を通りかかると、壮観な「招き」に圧倒され、しばらく見入ってしまいます。
 幼いころ、何度か招きを書く作業を拝見しました。そのたびに祖父から「歌舞伎の役者はんは、名前も檜(ひのき)に書いてある。檜舞台を離れることはあらへんのや」と教えられ、檜舞台という崇高な聖地を想像したものです。
 そんな、私にとっての夢舞台だった南座を訪ねてきました。あの、真っ白な光の舞台は、やはり「木曽檜」。今までに、いろいろな舞台の造作や修復を見てきましたが、こだわられるのは檜なのです。
 特に木曽檜は、伊勢神宮の御用材として有名で、厳しい寒さの中で育った樹齢約百五十−三百年の天然檜。白みがかった色で光沢を持ち、鼻を突き抜ける香気は格別です。現在は、伐採時期や数量を限定するなどして守られているため、なかなか手に入らなくなってきています。
 さらに、興味深かったのが、舞台裏に控えていた所作台。基本の大きさは、幅三尺(約九十センチ)、長さ十二尺(約三百六十センチ)。この台を十五枚舞台の上に敷き、檜の所作舞台(置舞台、敷舞台ともいう)をつくるのです。演者の足のすべりをよくし、また足拍子が響きよいようにするという役割も担っています。
 所作台は、花道の上にも敷きます。幕あいに、大道具さんがお客さまに見えないよう布壁を作り、敷き詰めていくのです。足拍子の加減か、少しへこんでいたりするものの、私の見た所作台には、大きな檜から製材されたのか悠々とした杢(もく)目がありました。長年使われるうちに、檜自体が鍛えられて堅くなり、甲高い音を出しているのだと思います。
舞台裏に控える檜の所作台
芝居小屋の雰囲気を残す南座の内部
 今年の顔見世は二代目中村錦之助さんの襲名披露に「寿曽我対面」があり、檜舞台での華やかな口上が見ものです。私もあやかりまして年末のご挨拶(あいさつ)を。
「本年も、木林学、ご愛読ありがとうございました。来年も一層のご贔屓(ひいき)に、すみからすみまで、ずずずいぃぃぃっと(チョン)、御願いたぁてまつりますぅ」