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ゑびす神社に学ぶ 身近な神様と檜の自然

「十日ゑびす」でたくさんの参拝者を迎える本殿(京都市東山区・ゑびす神社)
 新年、あけましておめでとうございます。
 今年も、木のある暮らしと木造建築、木という素材にこだわりながら「木林学」にて学んでいきたいと存じます。ご支援、ご愛読をどうぞよろしくお願い申し上げます。
 お正月三が日も過ぎ、いよいよ初仕事。先行きの見えない世相に、今年こそ繁栄を願うのは、どなた様も変わらないことと思います。大阪今宮神社、西宮神社と並び、日本三大ゑびす神社のひとつ、京都・祇園にあるゑびす神社は、その地に鎮座して八百五年。栄西禅師による建仁寺建立にあたり「ゑびす社」を守護神として祀(まつ)り、明治に至るまで建仁寺と一体でした。つまり、明治になって「ゑびす神社」(正式には恵美須神社)となったのです。
 毎年、母とお参りするゑびす様のお誕生日である十日ゑびすに、この社の独特の木遣いを感じていました。それは、柾目(まさめ)の美しさです。社殿は神社特有の破風造り、材料はすべて国産の檜(ひのき)です。ちなみに木材業界では国産の檜のことを通称「地檜(ぢび)」と言います。
 格子はひし形にそろえられ、その柾目も均一です。堅く絞った水拭(ぶ)きを欠かさず、とお手入れも行き届いています。第三十七代中川久公宮司に伺うと、ゑびす神社の歴代の宮司が信仰の厚さを「かたち」にし、木の命をいただいて建てたという自然への敬い、檜本来の色、質感をそのまま社殿に反映したと聞きました。ゑびす様は商売の神様ですから、物事の通りを良くする意味でも柾目がよかったのでしょうか。
美しい曲線を描く本殿の天井
ゑびす様の右手に持つ釣りざおからイメージし、古来よりめでたい縁起物の竹の葉、笹をゑびす様の象徴としたといわれる。吉兆笹をはじめ、宝船、福箕、熊手などの縁起物。絵馬の原画は名誉宮司が描く
 祇園という土地柄、千鳥足の参拝も可。九日から十一日まで夜店も出て、にぎやかに深夜まで開門します。「商売繁盛で笹もってこい」の端唄(はうた)からわかるように「ゑべっさん」と町衆から慕われる身近な神様。その神様とお社として生かされている檜(自然)とが共存する空間、それがゑびす神社なのだと思います。 (銘木業見習)