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北山杉に学ぶ 風格と伝統も競い合う場

厳しい寒さの中で始まった北山杉の市(京都市北区中川・京都北山丸太生産協同組合)
 北山杉の産地は、北山おろしが底冷えを招くような凍(い)てつく寒さ。指先や耳もかじかんでしまいます。そんな中、「え〜、これなんぼぉぉぉ」と低く響く声で、北山杉の市が始まります。
 市は、月に一度で、夏場は閉鎖しています。この寒い時期こそが、売り時。市場に並ぶ北山杉は、ほとんどが三メートルの長さのもので、約二千五百本。この数を一日で売りさばくには、二人の振り子(売方(うりかた))が交代で、テンポ良く、次々と競(せ)っていかねばなりません。私が初めて市場に来たころは、何を言ってるのか早口でわからず、さらに買いたくても指先で値段を出すタイミングが合わず、思うように買えませんでした。
 ちょうど、近くの中川小学校の子供たちが市場の見学に来ていました。地元の競りを間近で見て興奮し、寒い中、いろいろと質問していました。初めて来た人は、きっと誰もが売り声の響きに不思議な高揚感を覚えます。やはり、競り合う市場は、一種の戦いの場なのです。
競りを進めてゆく様子
上左から時計回りに縮緬丸太、磨き丸太、天然出絞丸太、人造絞丸太
 北山杉のおおまかな種類は、磨き丸太、人造絞(しぼ)丸太、天然出絞丸太、面皮丸太、変絞丸太、タルキなどです。特に珍しいのは、「縮緬(ちりめん)」と呼ばれる北山杉。天然に出来た絞が丸太の中へ中へと浸透していくような景色。縮緬のような縮みに例えて、そのような名前が付きました。昔は室町や西陣の呉服屋、織物問屋の床の間には、この丸太を好んで据えたこだわりの旦那(だんな)衆がいたそうです。
 「丸太の並び方だけでも、北山杉の風格と伝統を感じます。市場は買方の競りだけでなく、生産者の競い合いの場でもあるのです」と、京北銘青会の森岡喜昭さん(42)。この日は、北山杉生産組合の若手で構成する杉和会と京北銘青会が初めて合同で行った記念すべき競りだったのです。
 住宅着工数が低迷し、北山杉を使う現場も減っています。「自分たちに出来る、新しい第一歩を踏み出したばかり。切磋啄磨(せっさたくま)して丸太を生産していきたい」と、杉和(しんわ)会の吉岡英昌さん(36)。建築業界の厳しい冬の中に、春を待つ若芽を見つけた気がします。(銘木業見習い)