京都新聞TOP > 文化・文芸・教育アーカイブ > 建仁寺垣に学ぶ 「庭は一生もの」心込め手入れ

建仁寺垣に学ぶ 「庭は一生もの」心込め手入れ

圧迫感なく、やんわりと視線をさえぎる建仁寺垣
 風薫る季節がきました。青々とした木々の息吹を感じます。京の庭は、一坪(三・三平方メートル)の坪庭から社寺の壮大な庭まで、さまざまな趣きを持ち、豊かな自然のうつろいを感じる空間です。ただ植栽された土地があるというのとは違う、塀や垣根に囲われている中で、人が手を入れてこそ成り立つ景色というものがあるのではないでしょうか。
 建仁寺垣を立てた庭があると聞き、京都市左京区の「廣東料理蕪庵」を訪ねました。ご主人の武田淳一さんは「花や木、竹がある景色は、一時のことでなく、一生のものと考えて手入れをすることが大事」と語ります。大正の初めに作られた庭は回遊式で、サツキ、ツツジ、アセビ、楓(かえで)、椿(つばき)に加えて、十本もの赤松もあり、四季の彩りを楽しめます。その庭で、清涼な青竹の建仁寺垣が製作されていました。
建仁寺垣作りは庭師の仕事(京都市左京区下鴨・廣東料理蕪庵)
年月と丁寧な手入れを経て色つやを増した建仁寺垣(上)と、
垣庭で飼われているウコッケイ。虫を食べて一役買っています
 それは、青竹を一寸四分(四十二ミリ)幅にして割り、たてに並べて半割竹で押さえた目隠しの垣根。名前の由来は、建仁寺の創建当時(鎌倉時代)にこの形式のものが作られていたからとされ、現在も茶席「東陽坊」の西側に、寺の名物「建仁寺垣」として、設けられています。
 「建仁寺垣は、結界の役割をしています。高すぎれば拒絶を感じさせ、低すぎたら塀の役目を果たさない。座敷から見た景色を想像して、高さも均一ではないんですよ」。三代に渡り、この庭を管理する庭師で「植熊」の親方小河正行さんはこう話します。
 不幸せにならないように節をそろえないことや、暑くなり色が悪くならないうちに、磨いた真竹の青竹で垣根を製作すること−。話を聞きながら、四季を織り成す自然のもてなしを心掛ける職人の気遣いを感じました。
 庭に十五年ほど経過した建仁寺垣がありました。飴(あめ)色の艶(つや)は、ぞうきん拭(ぶ)きで生まれたものです。「物言わぬ竹も石も木々も風も、どうしたらええか教えてくれる。よく見て、むやみに変えず、問いかけながら手入れを続けることが大切なんやろうね」と、小河親方。また、自然とともに仕事をする意義を教わったように思います。