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障害者雇用  「旗振り役」があきれる

 障害者雇用の旗振り役がこれでは、あきれてものも言えない。
 中央省庁が義務付けられた障害者雇用の割合を、42年間も水増しし、目標を達成したように見せかけていたことが明らかになった。
 民間企業に障害者の雇用を促し、目標に達しなかったら罰則に近い形で納付金を課し、企業名公表にも踏み込む。だからこそ、省庁は障害者雇用の手本を示さなければいけないのに、だ。
 こんなことでは企業に協力を求めても説得力がない。所管の厚生労働省は水増しの事実を認め、調査を本格化するとしている。全省庁の実態をつかみ、長年続いた原因を解明し、早期に公表しなければ、信頼は戻らない。
 障害者雇用促進法に基づく制度によって、一定の割合で障害者を雇うよう義務付けられていて、国や自治体は企業より高い2・5%に設定されている。今年3月の改定までは2・3%で、国の33行政機関の平均雇用率は2・49%と法定割合を上回っていた。
 ところが、国土交通省など10近い主要省庁で、障害者手帳の交付に至らないなど対象外の職員を合算することが常態化していた。対象外を除けば雇用率が1%未満になる省庁も多いとみられる。
 1976年に身体障害者の雇用が義務化された当初から行われていたといい、これまでチェックされなかったのは、なぜか。各省庁は毎年6月に障害者雇用数を厚労省に報告する義務があるが、内容の真偽を確認する仕組みになっていない。身内に甘いと批判されても仕方あるまい。
 制度は差別を禁止し、障害者の就労機会を広げるのが目的。対象を知的障害、精神障害に拡大し、雇用率を段階的に引き上げてきた。安倍晋三政権は「一億総活躍社会」の実現を掲げるが、足元から水を差された格好だろう。
 国会対応や突発の仕事、長い拘束時間、業務の外部化などで、障害者の働く場確保に苦慮するというが、それは理由にならない。むしろ、省庁が率先して不合理な働き方を改め、障害者が働く場を多く設けるようにすべきだろう。
 民間企業に雇用されている障害者は、昨年6月時点で約49万6千人、雇用率は1・97%と、いずれも過去最高を更新した。しかし、法定の目標達成にはまだ遠い。
 障害者雇用の課題は多く、中小企業へのサポートを含めて議論する必要がある。旗振り役の本気度は疑わしくなったが、社会全体で取り組むべきことだ。

[京都新聞 2018年08月18日掲載]

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