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保育無償化  自治体懸念に耳傾けよ

 政府が来年10月に実施予定の幼児教育・保育無償化について、賛成する自治体は半数未満にとどまっていることが共同通信の主要都市調査で分かった。
 81市区が回答し、うち60%は認可保育所などに入れない待機児童が無償化の影響で増えると予想している。人手不足で「現場の疲弊や保育の質低下につながる」といった懸念の声も上がった。
 幼児教育・保育無償化は昨年の衆院選の直前、安倍晋三首相が突然打ち出した。選挙後、「人づくり革命」と称する2兆円の政策パッケージに盛り込まれた。
 政府が5月に決めた方針は、世帯年収を問わず3~5歳児の幼稚園や認可保育施設の利用を無償化。認可外施設でも一定額を上限に補助するといった内容だ。
 「政権の人気取り」との批判もあるが、無償化の方向性は理解できる。2月の全国世論調査では賛成派が71%にのぼった。
 一方で、待機児童解消を求める保護者らの反発も見逃せない。高所得層ほど恩恵は大きく、教育格差が拡大する恐れもある。
 今回の調査で、実務を担う自治体にも賛同が広がっていない状況が浮き彫りになった。
 もともと無償化自体には賛成の自治体が多かったが、政府の進め方に対し「待機児童の解消と順番が逆」「保育士の確保などほかに財源を使うべき」といった異論が出ているという。
 京都市は「どちらかといえば賛成」としながらも「無料になればこれまでより長い時間、子どもを預ける保護者が増え、結果的に保育士を増員しなくてはならなくなる」と懸念を示している。
 最優先すべきは、やはり保育士の増員や待機児童の解消だ。
 準備期間が短い点にも苦言が集中した。無償化の財源を巡る国と地方の負担割合は定まっていない。実施の先送りを求める意見が相次いだのも、もっともだろう。
 財源には消費税率引き上げによる増収分の一部を充て、本来の使途である借金返済は先送りされる。だが、財政再建との兼ね合いが十分議論されたとは言い難い。
 4月現在の待機児童数については83市区が回答し、前年同期から21%減少した。京都を含む33市がゼロだったが、20市で増えており、なお解消には遠い。
 保護者も自治体も懸念を示す中、巨額を投じて無償化を最優先することが効果的なのか。自民党総裁選でも重要な争点として、しっかり議論してほしい。

[京都新聞 2018年08月16日掲載]

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