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社説:タンカー攻撃 事態の緊迫化避けたい

 中東情勢の緊張緩和を妨害する意図なのか。日本などのタンカー2隻が、イラン沖のホルムズ海峡近くで何者かに攻撃を受けた。

 安倍晋三首相が米国と激しく対立するイランの最高指導者ハメネイ師と会談した、まさにその日である。

 日本の現職首相の訪問は41年ぶり、最高指導者と会うのは初めてで、戦争回避の方針を確認するなど成果もあった。冷や水を浴びせられた形だ。

 中東情勢の厳しさ、問題に関与する難しさを改めて見せつけられたといえるだろう。

 緊張緩和への動きが失速し、情勢が再び緊迫化する恐れがある。日本政府は原因や状況の的確な把握に努めなくてはならない。

 攻撃を受けた日本のタンカーは海運会社「国華産業」が運航し、砲弾を受けて出火、フィリピン人の乗組員21人は避難した。

 日本船籍ではなく、日本に関係する船舶をあえて狙ったとは断言できない。だが、安倍首相の訪問のタイミングと一致しており、周辺地域の緊張を高めようとする意図があるとみられる。

 ポンペオ米国務長官は「イランに責任がある」と名指しで非難した。情報機関の分析などから判断したというが、性急な断定には危うさを感じる。

 イラン政府は関与を否定している。米国とイラン双方が自己を正当化する映像を公開し、「情報戦」の様相を帯びてきている。

 日本政府は米国と緊密に連携しながら情報交換を行っているというが、現時点で安易に同調するのは避けるべきだ。

 国連安全保障理事会は米国の要請で緊急の会合を開いた。議長国クウェートのオタイビ国連大使は「全メンバー国が事件を非難した」と述べたが、イランの関与には言及しなかった。

 国際社会は冷静な対応が求められる。事態のさらなる悪化を避けることを第一としたい。

 ホルムズ海峡はこれまでも中東の緊張が高まると、タンカー攻撃があり、封鎖の警告が繰り返されてきた。

 2010年には商船三井の大型タンカーでテロが疑われる被害があり、今年5月には多国籍のタンカーが攻撃を受けていた。

 日本にとってはエネルギー供給の生命線だ。原油価格が高騰すれば家計にも影響する。

 経済活動が制限されないよう、国際社会の連携が必要だ。海域安定のため共同監視体制などの取り組みを検討するべきだ。

【 2019年06月15日 17時25分 】

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