京都新聞
紙面特集

謎の蒔絵師 永田友治
-尾形光琳の後継者を名乗った男
MIHO MUSEUM

「槙鹿蒔絵螺鈿料紙箱・硯箱」 江戸時代(18世紀) 京都国立博物館蔵

見えてきた 漆の向こう

 江戸時代中期に京都で活躍し、独自の技法で漆工芸史に足跡を残したと伝えられる永田友治(ながたゆうじ)の実像に迫るMIHO MUSEUM(甲賀市)の夏季特別展「謎の蒔絵(まきえ)師 永田友治―尾形光琳の後継者を名乗った男」が8日に開幕する。

 光琳風の意匠に倣った琳派の一人に位置づけられる友治は、緑色系の青漆を使ったり、「友治上げ」と呼ばれる錫粉使用の高蒔絵を用いたりする独創的な作風が特長。だが生没年や活躍年代などベールに包まれた部分も多い。近年、作品収集や基礎研究が進み、最新調査に同館も協力し、初の企画が実現した。

 展示されるのは、秋の月光を主題に槙の木と、意匠化された鹿を描く有名な「槙鹿蒔絵螺鈿(らでん)料紙箱・硯箱」(京都国立博物館蔵)など計約80点。友治技法の見本とされる「つぼつぼ蒔絵盃台(はいだい)」は合金粉の蒔絵で青海(せいがい)波紋を描き、さまざまな合金粉や顔料で多彩なつぼつぼ紋を散らす。唯一の青漆の盃「藤娘蒔絵盃(さかずき)」は全体を青漆の刷毛(はけ)目塗りした逸品。

 謎多き人物だが、自作には名を記し、箱と包み紙の署名や捺印(なついん)も見どころの一つ。見逃せないのは光琳の号「青〻」に「子」を加えた号「青〻子」や、光琳と同じ印「方祝」を使っている点だ。京での活動期は光琳、弟の尾形乾山の住まいとも近く、光琳の後継を強く意識していたことがうかがえる。

 やがて銅座や漆問屋などが集積する大坂に活動拠点を移し、さまざまの色の作品群を生み出す。源氏物語に着想した「浮舟蒔絵硯蓋」には純度100%の銅板を貼っていた。同展では、材質の化学分析による研究成果を基に大坂下向の謎など新知見を紹介する。

 1715(正徳5)年の浮世草子「世間子息気質(むすこかたぎ)」には「友治盃金弐(に)両」の記述がある。活躍年代や生誕年が推定できる関係資料を含め、全6章で展示を構成した。

 担当の桑原康郎学芸員は「琳派を受け継ぎ、進化させようとする意気込みを感じさせる名作ぞろい。おぼろげながら見えてきた友治像に触れていただく貴重な機会では」と話す。

 会場では、京の蒔絵師にちなんで「京の町衆文化」と題し、与謝蕪村や円山応拳らの館所蔵作も企画陳列する。

※永田友治の「友」は、右肩に「ヽ」 あり

「青漆双蝶蒔絵螺鈿菓子重」
江戸時代(18世紀)
個人蔵、撮影・山崎兼慈
「槙鹿蒔絵菓子重」 江戸時代(18世紀)
個人蔵、撮影・山崎兼慈蔵
「つぼつぼ蒔絵盃台・共箱」
江戸時代(18世紀) 個人蔵、撮影・森仁
「青漆藤娘蒔絵盃」 江戸時代(18世紀)
個人蔵
「刷毛目塗燕子花蒔絵螺鈿菓子盆(10枚の内)」 江戸時代(18世紀)
個人蔵、撮影・山崎兼慈
商標印(刷毛目塗燕子花蒔絵螺鈿菓子盆の紙袋) 江戸時代(18世紀) 個人蔵、撮影・山崎兼慈
「福禄寿鶴亀蒔絵三組盃」 江戸時代(18世紀) 京都国立博物館蔵
「青漆浮舟蒔絵硯蓋」 江戸時代(18世紀) 個人蔵、撮影・森仁
案内
■会   期6月8日~7月15日
月燿休館。ただし7月15日は開館
■開 館 時 間午前10時~午後5時(入館は午後4時まで)
■会   場MIHO MUSEUM(甲賀市信楽町田代桃谷300)0748(82)3411
■入 館 料一般1100円、高校・大学生800円、小中学生300円(20人以上は各200円引き)
■主   催MIHO MUSEUM、京都新聞
■関 連 企 画▽講演会「謎の蒔絵師 永田友治」6月30日午後1時半、高尾曜・国立能楽堂調査資料係長。100人。予約不要
▽ギャラリートーク 6月8、22日、7月13日午後1時、桑原康郎MIHO MUSEUM学芸員。各20人。予約不要
【2019年6月2日付京都新聞朝刊掲載】