京都新聞
紙面特集

企画展「日本の書-和歌と詩のかたち」
泉屋博古館

重要美術品 石山切(藤原定信) 平安時代

恋文。美にため息

 たとえば恋文のように、書かれた文字情報以上に書き手の思いや人となりを伝える書がある。泉屋博古館(京都市左京区)が所蔵する日本の書跡を、住友家15代春翠のコレクションを中心に展観する。

 書の味わい方は多様だ。まずは書そのものの美しさ―流麗な線、墨の濃淡、配置の妙などを楽しむ。書かれた内容も大事だが、使う紙(料紙)も、色を染めたり文様を入れたり、金銀箔や砂子をまくなど装飾が施される。さらに表装の美。これは後世、その書を見いだして手元で愛玩した人の美意識が表れる。

 重要美術品「石山切」は、淡い紫と薄茶色の二種に染めた紙をちぎって組み合わせ、紫には銀で鳥や葉の文様、砂子を散らす。薄茶には墨と銀で飛ぶ鳥や野を描く。この凝った料紙に平安時代の能書家・藤原定信が紀貫之の恋歌を書き散らした。速い書きぶりで知られた定信らしく、軽やかな筆致が料紙の意匠と呼応して流れる。貫之の歌心、定信の感性、料紙の華麗さがあいまって、ため息が出るほどの美が作り出されている。

 書の展示は、つい「何と書いてあるのか」を考えがちだが、絵を見るようにその姿を眺めてもよい。たとえば紫式部の娘・大弐三位の歌集断簡「端白切」などは、粒ぞろいのころころした字がかわいく、内容が分からなくても目に心地よい。

 かな古筆の白眉とされる寸松庵色紙や熊野懐紙、松花堂昭乗の三十六歌仙書画帖、近世の画賛なども出て、多角的に書の楽しみが味わえる。

熊野懐紙(藤原定家) 鎌倉時代(建仁元年)
寸松庵色紙(伝紀貫之) 平安時代
重要文化財 布袋図(月江正印賛/黙庵霊淵画)賛は元時代、画は南北朝時代

三十六歌仙書画帖 伊勢(松花堂昭乗)江戸時代(元和2年)
重要美術品 端白切(伝大弐三位)
平安時代

大字「竹声松影」(貫名菘翁)江戸時代
重要美術品 仮名消息(藤原俊成) 鎌倉時代
案内
■会   期5月25日(土)~6月30日(日) 月曜休館
■開館時間午前10時~午後5時(入館は午後4時半まで)
■会   場泉屋博古館(京都市左京区鹿ケ谷下宮ノ前町)
■主   催公益財団法人泉屋博古館、京都新聞
■入 館 料一般800円、高大生600円、中学生350円
(小学生以下無料。※20人以上の団体は2割引き。障害者手帳提示の人は無料)
■列品解説31日(金)と6月22日(土)午後2時、講師は実方葉子・同館学芸課長(入館料が必要)
■問い合わせ075(771)6411
【2019年5月22日付京都新聞朝刊掲載】