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湖国のコメ作り 将来見据え経営戦略を

滋賀本社 広中孝至
水田の水管理を遠隔で操作するシステムを見学する農家や行政関係者ら(12日、近江八幡市安土町)
水田の水管理を遠隔で操作するシステムを見学する農家や行政関係者ら(12日、近江八幡市安土町)

 国によるコメの生産調整(減反)が今年の作付けから廃止され、農家が自らの経営判断で生産できるようになった。だが、過剰作付けに伴う値崩れを懸念する滋賀県や京都府などは前年並みの生産量を維持し、「様子見」状態だ。今後も国内消費量の減少が見込まれる中、海外の安いコメを含め産地間競争は避けられない。「もうかる農業」の実現に向け、将来を見据えた経営戦略が問われている。

 近江八幡市内の水田で今月中旬、インターネットを使って遠隔操作する水管理システムの実演会があった。ICT(情報通信技術)などを活用した「スマート農業」を推進する県が企画し、農家や土地改良区の役員ら約80人が集まり関心の高さを示した。

 午後3時15分。約1キロ離れた場所から操作したパソコンの指示に従って給水バルブが自動で開き、4枚の田に一斉に水が流れ始めた。一定の水位に達すると、センサーが感知し自動で止まる仕組みだ。水位を見回る作業が軽減され、使用量も減らせる。

 水稲の水管理は労働時間の約3割を占める。県内では農地の集積に合わせ1枚1ヘクタールの大区画化が進み、経営の大規模化によって水管理の負担が増大している。省力化は琵琶湖の水をくみ上げるポンプの稼働抑制にもつながり、長寿命化が期待できる。

 導入を前向きに検討する農事組合法人フォームにしおいその安田惣左衛門相談役(77)は「将来にわたって農業を続けるには、コメ60キロ当たりの生産コストを1万円以下に抑えられるかに懸かっている。ICT化で水や肥料を数値化し、どこまで減らせるか追及しなければいけない」と危機感を募らす。

 県内の生産コストは60キロ当たり1万5387円(16年産)で、全国平均1万4584円より高い。国は5年後に農地の8割を担い手に集積し、生産コストを9600円に抑える目標を掲げるが、「1万円切り」は容易でない。

 コスト削減を追求する背景には、環太平洋連携協定(TPP)や欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)により関税が撤廃された場合の輸入品との価格競争がある。

 国内消費量は毎年8万トンずつ減少しており、海外市場への販路拡大も喫緊の課題となっている。17年産近江米の輸出量は170トンで、全国の約1%にとどまる。海外の安いコメに対抗できる経営基盤の強化が欠かせない。

 減反廃止を受け、県や農業関係団体などでつくる県農業再生協議会は「引き続き生産調整は必要」として、国が示す需給見通しを踏まえ、当面は自主的に県内生産量の「目安」を設定する方針だ。

 今のところ市場に混乱は見られない。ただ、米価が比較的高い状態がいつまで続くかは不透明だ。県はブランド米「みずかがみ」や有機米の生産拡大で付加価値を高める一方、収量増で増収が見込める業務用米への転換も推進する。農家個々が需要に応じた生産を積極的に進める必要がある。

[京都新聞 2018年7月25日掲載]

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