The Kyoto Shimbun
取材ノートロゴ

思考力重視の教育へ 授業在り方、社会で議論を

報道部 山田修裕
教育改革の理念や変更点について、国の担当者から話を聞く教員ら(京都市伏見区)
教育改革の理念や変更点について、国の担当者から話を聞く教員ら(京都市伏見区)

 2020年度から学校教育が、主体性や思考力を重視する方向に変わる。新学習指導要領が実施され、大学入試でもこうした力が評価される。この教育改革をテーマに「学びアップデート」を10〜11月に連載した。取材では「日本の教育の集大成」と熱っぽく語る文部科学省や教育委員会の担当者と話したが、自分が受けた教育の記憶が頭をよぎり、「果たして理念通り中身があるものになるだろうか」という懸念が拭えなかった。

 記者(34)の高校時代。同級生が「何のために勉強するのか」と言っても、教員の答えは「とりあえず覚えろ」だった。授業は単語や文法の暗記、教科書解説がほとんど。だが教師だった両親と話をすると、「社会の変化に主体的に対応できる力の育成」という今と同じような理念が掲げられているとのことだった。高校生ながらに、そんな力を養う授業とは思えなかった。

 今回の教育改革でも理念の実現は容易ではないだろう。連載の取材では対応に苦しむ学校も多く見られた。

 授業は今後、対話や議論を取り入れた課題解決型・探究型の学習スタイルが主流になるとされる。だが課題研究として校外の文化財を訪ねたある高校の授業を取材したところ、生徒はばらばらになって案内板に書かれた説明をメモしているだけだった。

 「インターネットでも調べられることをなぞるだけで、どうやって思考力を深めるのか」。教員に尋ねても明確な答えはなく、授業づくりに苦心しているようだった。教科書に無い歴史エピソードを紹介したり、生徒が興味を持った文化財を聞き取ってさらに背景を調べるようアドバイスすれば、もっと魅力的な授業になるだろうに、と感じた。

 教科では国際化への対応のため、英語が大きく変わる。小学5、6年では正式教科となり、大学入試では民間検定試験が導入される。ただ英語を使えても、伝えるべき自らの考えが練られていなければ本末転倒だ。両者の両立に、頭を悩ませる教員も多い。

 忘れてはいけないのは、主体性や思考力といった数値化しづらい力を評価することの危うさだ。たとえば「話すのが苦手」な生徒を安易に「学力が育っていない」と評価しては子どもの「生きにくさ」につながりかねない。主体性や思考力を身につけるための教育を重視しつつ、それを評価する限界も認識する。そんな繊細な心構えが、教育者には求められるのではないか。

 教育の要は教員だ。教員研修のような設定された場だけでなく、日常的に授業のあり方を話し合い、切磋琢磨(せっさたくま)することが求められる。親もまた新しい教育に関心を持つことが必要だろう。主体性や思考力が必要なのは子どもだけではない。20年度まで1年半を切った。子を持つ親の一人として、議論の行方を注視しつつ、一緒に考えていきたい。

[京都新聞 2018年11月14日掲載]

▼前の記事取材ノートからTOP次の記事▲

各ページの記事・写真は転用を禁じます
著作権は京都新聞社に帰属します
ネットワーク上の著作権について―新聞・通信社が発信する情報をご利用の皆様に(日本新聞協会)
電子メディアおよび関連事業における個人情報の取り扱いについて
京都新聞
京都新聞TOP