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導入進むビデオ判定 映像に依存せず審判を

運動部 山下悟
サッカーW杯ロシア大会で導入されたVARの視聴覚室。映像を確認するモニターなどが並ぶ=モスクワ(共同)
サッカーW杯ロシア大会で導入されたVARの視聴覚室。映像を確認するモニターなどが並ぶ=モスクワ(共同)

 今夏のサッカー・ワールドカップ(W杯)ロシア大会で、初めてビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)が採用された。他競技でも判断の難しいプレーを映像で検証する動きが広がり、効果を上げている。一方で、映像技術に依存するのではなく、プレーを判定する主体は、あくまで審判、人であることを再確認したい。

 サッカーW杯のVARでは、得点や一発退場など試合結果に大きく影響するプレーを映像で確認した。全64試合で17件の判定が変更された。ファウルがあったと確認される事例が多く、1大会で18回が最多だったPKの数は、29回に増えた。逆のケースもあり、日本と同組のセネガルは、コロンビア戦でPKの判定が取り消された。VARがなければ、日本はグループリーグを突破できず、16強へ進めなかったかもしれない。

 国際サッカー連盟(FIFA)のインファンティノ会長は「誤った判定が正される」とVARを評価した。1986年大会のマラドーナの「神の手ゴール」など、明らかな誤審は防げる。複数のカメラで録画することで、選手もよりフェアプレーを意識するのではないか。ファウルを受けたように見せかける「シミュレーション」なども抑止できるだろう。

 ビデオ判定はすでにさまざまな競技で採用されており、仕組みに違いもある。サッカーW杯では監督や選手からVARの要求はできないが、テニスの「チャレンジ」システムのように、選手側が一定の回数に限りビデオ判定を求めることができる競技もある。競技ごとの特性を踏まえつつ、他の事例を参考にして、それぞれがより良い仕組みを模索したい。

 プロ野球は今年から、球団側がビデオ検証を要求できる「リクエスト」が導入された。物議を醸したのは、6月のオリックス対ソフトバンク。3―3の延長十回、ソフトバンクの選手が放った打球は、ライトポール際のファウルと判定された。しかしソフトバンク側のリクエストで本塁打に覆り、決勝点となった。試合後、オリックス側の抗議で審判が再度映像を確認すると、実際はファウルだったことが判明。映像があっても結局は運用次第で万全ではないという厳しい事実を突きつけた。

 サッカーJリーグでも審判の研修が進められており、今後ビデオ判定が導入される見通しだ。主審と映像担当者が適切に連携できるように習熟が求められる。

 それでも、ビデオ判定は、VARの名称通り、審判の「アシスタント」にすぎない。安易な使用はゲームの流れを止め、魅力を損なわせかねない。審判が確かな判断で試合を裁き、選手は判定を尊重する。両者の信頼関係が、共感される好ゲームの土台となる。

[京都新聞 2018年11月21日掲載]

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