The Kyoto Shimbun
取材ノートロゴ

谷垣禎一氏、公の場に 復帰求める声、絡む思惑

東京支社 高橋晴久
大勢の報道陣に囲まれる谷垣氏(中央)政界復帰を求める声が絶えない=首相官邸
大勢の報道陣に囲まれる谷垣氏(中央)政界復帰を求める声が絶えない=首相官邸

 取り囲んだ数十人の記者が発言を聞き逃すまいと懸命にICレコーダーを差し出し、カメラマンがシャッター音をひっきりなしに響かせた。

 10月31日、自転車事故で頸髄(けいずい)損傷という大けがを負った自民党の谷垣禎一前幹事長(73)が首相官邸を訪れ、2年3カ月ぶりに公の場に姿を見せた。官邸ロビーにできた人だかりが、注目の高さを表していた。

 党内には回復ぶりを喜ぶ声とともに「必ず政界復帰の日が来ると信じて支えたい」(二階俊博幹事長)、「政治家は死なず、消えることはない」(中谷元・元防衛相)と政界復帰を期待する発言が相次いでいる。

 自民党にとっては来年夏の参院選比例代表の目玉候補になりうる。また中谷氏は谷垣氏が立ち上げた党内政策グループ「有隣会」の幹部だ。本人が何度も否定する中、復帰を求める声が上がる背景には、さまざまな思惑が絡む。

 一方、谷垣氏の復帰を望む声は党外の有識者からも上がる。京都選出の元民主党参院議員で慶応大教授の松井孝治氏はツイッターやフェイスブックで谷垣氏の人格や見識を高く評価し、「今の永田町に必要な人物だ」と次期参院選への立候補を求める。

 改めて理由を尋ねると、「安倍政権は評価できる部分もあるが、懐の深さがない」と政権運営の強硬さを指摘。与野党協議が成り立たず、対立ばかりが目立つ中、「党首級の人物で、野党から『この人が言うなら仕方ない』と思われる谷垣さんのような人が国会に必要だ」という。

 確かに国会審議は不毛なやりとりが繰り返されているように見える。安倍晋三首相は野党の質問にむきになって反論する場面が目立ち、民主党政権時代の非を何度もあげつらってきた。来年には首相として憲政史上最長の在任期間を達成するが、それにふさわしい余裕や貫禄はまだ感じられない。一方、野党側も合同ヒアリングと称して官僚を追及するが、つるし上げとの批判もある。

 対立のはざまで、国会軽視と受け取れる事態がやまない。臨時国会では、日本の移民政策を事実上転換する入管難民法改正案を巡る審議で意図的とも思えるデータの「誤り」が明らかになった。先の通常国会では、財務省による決裁文書改ざんという前代未聞の不祥事が判明したばかり。データや資料を操作することが政府内で常態化している恐れさえあるが、与野党が協力して政府をただそうとする機運は乏しい。

 「有隣会」の名称は論語の「徳不孤 必有隣」にちなむという。徳ある人は孤立せず必ず良き隣人に恵まれる、との意味だ。徳を政治信条に掲げる政治家を渇望する声の高まりは、政治の現状を浮き彫りにしている。

[京都新聞 2018年11月28日掲載]

▼前の記事取材ノートからTOP次の記事▲

各ページの記事・写真は転用を禁じます
著作権は京都新聞社に帰属します
ネットワーク上の著作権について―新聞・通信社が発信する情報をご利用の皆様に(日本新聞協会)
電子メディアおよび関連事業における個人情報の取り扱いについて
京都新聞
京都新聞TOP