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林業衰退どう向き合う 山林の減災と意識改革を

報道部 森静香
「枝打ち」の職人技などにより、木肌の美しさが際立つ北山丸太。マンションや西洋建築への導入も進む (京都市北区・京都北山丸太生産協同組合)
「枝打ち」の職人技などにより、木肌の美しさが際立つ北山丸太。マンションや西洋建築への導入も進む (京都市北区・京都北山丸太生産協同組合)

 国内で林業の危機が叫ばれて久しい。需要の減少や木材価格下落により、中山間地域では採算がとれずに放置される針葉樹林が増加を続けている。山林の「健康状態」は、土砂崩れや河川氾濫などの災害とも関わるため、一つの産業の衰退として傍観していい問題ではないはずだ。山の恵みを受けてきた私たち下流域や都市部の住民も、当事者としてできることを考えたい。

 9月に近畿を襲った台風21号。京都市内の山間部では倒木が相次ぎ、電力や交通網が寸断される甚大な被害が発生した。10月に同市北区の北山杉の産地を訪れると、無数の倒木が目に飛び込んできた。地域住民らは「人の手が入らない山林が荒廃してきている。台風や雪のたびに倒木におびえなければならない」と肩を落とすが、木を切り出せば赤字になる状況下、山主は身動きをとれずにいる。

 京都北山丸太生産協同組合(北区)によると、1988年に年間約8万6千本だった丸太の売上本数は、昨年は10分の1以下の6千本弱に減少した。輸入木材による市場圧迫や生活様式の変化などの波にあらがうのは難しい。

 後継者不足や災害にも苦しむ。今回の台風はよく手入れされた木をもなぎ倒し、被害規模は把握できないほど甚大だった。森下武洋理事長は「被害は目に見える倒木だけではない。北山杉は木肌の美しさが重要で、変色やよこしまが入っていれば売り物にならない」と顔を曇らせる。

 京都の建築文化を支えてきた芸術品の北山杉。そのブランド力を持ってしても苦境に立たされるほど、林業を取り巻く環境は過酷だと感じた。林業と共に歩んできた中山間地域には、どのような施策が必要なのか。私は二つの視点が重要だと考える。

 1点目は、山林の「減災」だ。手入れされない人工林は光が入らず、保水力低下や土砂崩れ、風雪による倒木が問題になる。広大な山林全てを対策するのは難しいが、基幹道路や電線沿いの木々だけでも、防災の観点で伐採を進めるべきではないか。国が今後導入する森林環境税を財源に充てるのも一案だろう。

 2点目は、山林に対する私たちの「意識改革」だ。無関係に思える地域も実は川でつながっており、下流域の人間は「天然のダム」とも言われる山林の恩恵を受けて暮らしている。鴨川や桂川上流の里山でいま、何が起きているのか。市民や企業、行政、教育者などがそれぞれのアプローチで考え、発信することで、木材を地元で消費する機運を高めていけないか。

 「時代のニーズに合わせ、マンションや西洋建築に合うデザインの北山丸太もある」と森下理事長が教えてくれた。林業再生の「特効薬」は無くても、匠の技が生んだ木の良さを私たちが知り、生活に取り入れることが、確かな一歩になると信じている。

[京都新聞 2018年12月5日掲載]

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