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違法スカウト摘発 性的搾取の悪質性認識を

報道部 森大樹
スカウト集団のメンバーが経営する会員制バーが入っていた雑居ビル(京都市東山区祇園町北側)
スカウト集団のメンバーが経営する会員制バーが入っていた雑居ビル(京都市東山区祇園町北側)

 街中で女性に声を掛けて性風俗店へのあっせんを繰り返したとして、京都市の祇園や四条河原町を拠点に活動していたスカウト集団が今年1月、職業安定法違反容疑で京都府警に摘発された。デートを重ねて恋愛感情を抱かせた上、仲間が経営するバーで高額な飲食をさせ、代金の支払い名目で半ば強制的に働かせる手口。取材に応じてくれた女性たちは、心を許した相手に裏切られ、深く傷ついていた。悩みを一人で抱え込み、対人恐怖症に苦しむ。卑劣な犯罪の「傷痕」を、多くの人に知ってほしい。

 「元の生活には戻れない」。大阪市の性風俗店にあっせんされた20代のAさんは悲しげにつぶやいた。きっかけは、2015年の秋。寺社や美術館など観光地巡りをした後、立ち寄った四条河原町で、男に「夜の仕事に興味はないか」と声を掛けられた。当時は商社に採用されたばかり。あしらおうとしたが付きまとわれ、LINE(ライン)の連絡先を交換した。男からは毎日、メッセージや電話の着信があった。やりとりを続けるうち、警戒心が薄まり、一緒に食事や買い物をする仲になった。

 立命館大の学生という男は知識が豊富で、話し上手だった。優しく振る舞われると、うれしくなった。2人の関係が「男女交際」に発展したころ、男が働く会員制バーに招待された。「尊敬している上司の誕生日なんだけど」「『ツケ』でも大丈夫」。喜んでもらいたい一心で、高級シャンパンを次々と注文した。2カ月後、約70万円の借金を背負わされていた。すると、男の態度が一変した。「親に肩代わりさせる」と脅され、求められるがままに商社を退職。あっせんされた性風俗店で働き始め、毎週約10万円をバーに持参する日々を過ごした。

 「自業自得」「世間知らず」−。今回の事件が報道されると、インターネット上には女性たちの「落ち度」を強調する書き込みがあふれた。しかし、取材を通して見えてきたスカウト集団の手口は、巧妙の一言に尽きる。「スカウトした女性とは交際できないルール。でも、あなたは特別」と心をくすぐり、「交際を続けるため」と言ってバーの常連にさせる。17年10月以降、この集団が大阪や京都、滋賀の性風俗店にあっせんしたのは約260人。だまされていることに気付かなかったり、後ろめたさから誰にも相談できず、泣き寝入りしている人もいるとみられる。

 Aさんは今も、平穏な生活を取り戻せずにいる。性風俗店は約2年半働いた後、辞めた。しかし「スカウトたちに見つかったら未返済分の支払いを迫られる」とおびえ、外出が怖くなった。親にも相談できず、隠し事をすることに後ろめたさが募る。「このままずっと、肩身の狭い思いで生きていくのかな」

 取材した別の女性もAさんと同様、ごく普通の恋愛を楽しんでいるつもりでいた。スカウト集団が仕掛けたわなは、日常の延長線上にあった。今回の事件では、同志社大などの男子大学生5人を含む男計9人が起訴された。性的搾取とも言える組織的犯罪が、私たちの身近な街で起きていたことを、社会全体で重く受け止めたい。

[京都新聞 2019年3月13日掲載]

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