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京都市新景観政策見直し 土地利用にメリハリを

報道部 北川裕猛
マンションやビルが立ち並ぶ京都市街地。三方の山並みを意識し、ほぼ全域で建物の高さに厳しい制限をかけている(小型無人機から)
マンションやビルが立ち並ぶ京都市街地。三方の山並みを意識し、ほぼ全域で建物の高さに厳しい制限をかけている(小型無人機から)

 京都市は本年度から、建物の高さなどに厳しい制限をかけている新景観政策の見直しに着手する。建て替え時に階数を減らす必要がある「既存不適格」のマンションが大量に生まれた問題についての取材を通じて、高さ規制が抱える負の側面も実感した。見直しとともに、古都ならではの景観を守る地区と高層ビルを集積させる地区を明確に区割りし、土地利用にメリハリを付けて都市の競争力向上につなげるべきだ。

 2007年に始まった同政策は、31、20、15メートルなど6段階の高さの上限を市街地の96・7%に設定した。「北山、西山、東山の三方の山並みなどを意識し、高さの上限を一段階下げた」。市は政策導入時の狙いを説明する。上限の象徴は、市中心部の御池、河原町、堀川、五条通りといった幹線道路沿いに設けた31メートル規制だ。

 この切りの悪い数字にはどのような意味があるのか。31メートルは「尺」の単位に置き換えると約100尺に相当し、市などによると、商業地などの建物の高さを100尺までに制限した1919(大正8)年制定の市街地建築物法(現在の建築基準法)にルーツを持つ。一世紀前の尺貫法のなごりに市中心部の「天井」を抑えられているのが現状だ。

 厳しい高さ制限は、地価にも影響を与える。公示地価調査の京都府前代表幹事で、不動産鑑定士の森口匠さん(66)は、外国人観光客の急増に伴うホテル建設ラッシュによってつり上がった地価を、「高さ制限がさらに押し上げている」と分析する。

 地価上昇は、固定資産税や都市計画税、相続税などの負担増として不動産の所有者にも跳ね返る。ホテルなどに相次ぎ変わる京町家減少の要因にもなる。

 地元の不動産仲介会社によると、中京区で取り扱う中古マンションの平均坪単価は約220万円で東京都心の一部水準に匹敵するという。同区でのマンションなど共同住宅の着工戸数は、20年前は1998戸に上ったが、近年はホテル事業者との用地取得競争の激化もあり、18年は556戸。住宅の供給不足から価格が上がり、区外から転居しようとする人には手が届きづらくなった。右肩上がりに増加していた同区の住民基本台帳人口も、ここ数年伸び悩む。

 「新景観政策には賛成だ。自宅マンションより高層の建物が周りに建たなくなって良かった」。ある分譲マンションの住人が取材時に述べた言葉が印象に残った。「京都らしい景色」を守るという政策理念の裏側で、住戸の希少性から資産価値向上を期待する層を生むのなら、政策の正当性に疑問符が付きかねない。

 高さ制限の緩和は、マンションやオフィスの供給を増やし、老朽化が進む既存不適格マンションなどの建て替えに道を開く。見直しの焦点は、景観保全と都市の持続的発展の間にどのように折り合いを付けるかだ。50年、100年先を見据えた都市の設計図を示してほしい。

[京都新聞 2019年4月17日掲載]

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