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彦根警官射殺事件 全ての警官に拳銃必要か

滋賀本社 辻智也
昨年4月に元巡査が上司を射殺した彦根署河瀬駅前交番(彦根市南川瀬町)
昨年4月に元巡査が上司を射殺した彦根署河瀬駅前交番(彦根市南川瀬町)

 「(上司は)奥さんも子どももいて、人生の一番楽しい時だったと思う。彼女もいない僕と比べると…」。19歳で上司を射殺した滋賀県警の元巡査(20)が殺人罪に問われた彦根事件の裁判員裁判。元巡査の言動は幼さがにじみ、「こんな子どもが拳銃を撃ったのか」と驚いた。高卒は10カ月、大卒は半年の警察学校を出れば、全ての警察官が拳銃を携行する現状に疑問を感じるようになった。

 元巡査が昨年4月、彦根市の交番で上司を射殺した。繰り返し書類作成の指導を受け、さらに両親をなじられたのを機に、憤りを一気に強めたという。行き過ぎた指導とはいえ、極端な犯行の動機としては理解に苦しむ。判決は「未熟な警察官」と指摘し、一般から選ばれた裁判員は「10カ月で警察学校を出た子に、拳銃を持たせるのは正直どうか」と疑問を呈した。

 元巡査は異常な人間だったのか。県警は「警察学校では問題のない生徒」と説明。幹部は「同僚を撃つような資質を見抜くのは無理」と話した。ならば元巡査以外にも「未熟な警察官」が拳銃を持たされているのではないか。

 京都新聞社は3〜4月、京滋などの街頭で524人に未成年の拳銃携行の是非を問うアンケートを実施した。結果、ほぼ半数が「未成年警官に拳銃を持たせない方が良い」と答えた。全ての警察官が拳銃を持つことを社会は完全には受け入れていない。

 リスクもある。富山市で昨年6月、元自衛官の男=当時(21)=が交番の警察官を刺殺して拳銃を奪い、小学校に向けて発砲した。今年4月には横浜市で男が拳銃を警察官から奪い取り、発砲した。

 拳銃は本当に適切に扱われているのか。警察庁は「2013年以降、警察官が発砲して人を傷つけた事案は18件で、不適切使用は彦根事件だけ」と説明する。だが、拳銃を奪われたケースや拳銃自殺、誤射、暴発などは「網羅的に把握していない」という。

 京滋では01年以降、拳銃が発射されたのは計12件(京都新聞社調べ)で、半数の6件は、彦根事件や自殺など「不適正」な発砲だ。

 拳銃携行について、複数の現職警察官に聞いた。交番経験のある男性警察官は「拳銃がないと、凶悪犯には立ち向かいたくない」と話した。一方、別の警察官は「使う機会はほぼないし、悪用しようと思えばできる。貸与の仕組みを見直してもいいのでは」と語った。

 犯行時の元巡査は職場実習中で常に指導役の上司とともに行動していた。先の警察官は「実習中はスタンガンやゴム弾でも十分」とも話した。職場で適性を見極めた後、拳銃を持たせる方が理にかなう。

 警察庁は「警察官は年齢を問わず、相手を制圧したり、自分や他人の安全を確保するため、小型武器を携行できる」とし、拳銃貸与の厳格化は考えていないという。しかし、「拳銃のリスク」が露見する事件が相次ぐ中、現状のあり方を再検証するべきではないか。

[京都新聞 2019年5月8日掲載]

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