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京でホテル開業ラッシュ 地域経済に生かす戦略を

報道部 江夏順平
ホテルの新規開業が相次ぐ京都駅八条口一帯(京都市南区)
ホテルの新規開業が相次ぐ京都駅八条口一帯(京都市南区)

 訪日客の急増を受け、京都で空前のホテル開業ラッシュが続いている。2021年にはホテル客室数が18年時点の1・5倍になるとの予測もあり、需要が供給を上回る状況は終わったともみられる。本格的な競争が始まり、産業として新たな局面を迎えようとしている。

 先日、大手不動産サービス会社、CBRE(東京)は19〜21年に京都市内で開業するホテルの客室数は18年の既存客室数の51%に上り、21年には1万2千室の供給過剰になるとの見通しを発表した。ニッセイ基礎研究所も、供給過剰により、20年にかけて稼働率が1割以上低下するとの予測を出した。

 京都市内で最大級の客室数を運営するエムズホテルマネジメント(下京区)の大槻紘平社長は「今はホテルをつくっただけお客さんが入る状況。供給が足りて競争が始まってから、真の意味で産業になる」とこれらの予測を肯定的に捉える。

 これからは、今ほどの高稼働率が望めない状況で客室単価を上げ、施設固有の強みで誘客することが求められる。既に、京都駅や河原町通周辺など市内中心部でも特定の地域への集中が進み、立地による差別化はより細やかになっている。新規開業の大半を占める宿泊特化型でも、内装やアメニティーに地元産品を用いて「京都らしさ」を強調したり、大浴場を設置したりと、特徴を出そうと工夫する。

 大槻社長は「ホテル側は稼働率75〜85%で利益を出せる状況、客側はいつ行ってもどこかに泊まれる状況が観光都市として適正」と指摘する。

 競争は雇用にも波及し始めている。2月に取材した観光産業の就職フェアでは多くのホテルが正社員の求人を出し、週休3日や有給休暇取得実績をアピールした。行政は千載一遇のチャンスとして、施策や助成で正社員化や良質な雇用創出を後押しする。会場には、京都のホテルでの就職を目指し、転居したという若者もいた。運営に欠かせないリネンや清掃など関連産業の裾野も広がるだろう。

 今後、新興国を中心に世界的に中間所得層が増え、当面は旅行需要が伸びるとされる。政府は観光立国を進めており、旅行者の一定数は行き先に日本を選び、京都にも立ち寄るはずだ。その際に受け皿として最大の消費先となるのが宿泊施設、特にホテルだ。

 京都市の門川大作市長は先月、誘致してきた市内の宿泊施設について「数は満たされつつある」との認識を初めて示したが、既に街の姿は変わった。東京、大阪に次ぐ規模の客室数がコンパクトな京都市内に集中し、開業ラッシュの次の段階に入りつつある。ホテルを地域経済にどのように位置づけ、生かすのか、行政や地元経済界は戦略的な視点が求められる。

[京都新聞 2019年6月26日掲載]

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