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社説:東京五輪の日程 「選手第一」の理想どこへ

 来年7月24日に開幕する東京五輪の詳細な競技日程が決まった。

 陸上のトラックやフィールドの計9種目の決勝が午前開始の時間帯で行われる。ビーチバレーやサッカー女子などの決勝も午前開始となった。異例の多さである。

 暑さ対策のほか、米テレビ局の意向が強く反映された形だ。競泳やバスケットボールなども、時差のある米国で夜のゴールデンタイム放送に合わせて設定された。

 大会の国際映像を供給する五輪放送サービス(OBS)が当初から、特定種目の午前決勝を国際陸上競技連盟などに求めるといった根回しを続けていた。

 過去の五輪や世界選手権では、予選は午前に行い、決勝は夕方から夜にかけて実施するのが一般的だった。

 午前中は体が動きづらく、調整に影響するとの見方もある上、東京五輪は酷暑が予想されている。選手のコンディションや体調を考えるなら、気温の下がる時間帯に競技を実施するのが妥当だったはずだ。

 そもそも東京五輪は「アスリート・ファースト(選手第一)」を重視するのではなかったのか。米国の視聴者を優先し、選手を置き去りにするのは主客転倒と言わざるをえない。選手の能力とパフォーマンスを最大限に引き出すのが五輪大会であることを忘れてはならない。

 大会組織委員会の室伏広治スポーツディレクターは「地元だけでなく世界の観客を意識した」「選手はこれ(競技日程)に合わせて調整し、ベストを尽くしてほしい」と語ったが、選手は従来とは異なる対応を迫られる。

 東京五輪を真夏の7~8月に開催するのも巨額の放送権料を支払う米テレビ局の意に沿ったものだった。注目競技が北米向けの時間設定となるのは、2008年北京五輪や昨年の平昌冬季五輪などでも同様だ。

 国際オリンピック委員会(IOC)の収入源の47%は放送権料が占めている。放送権料は高騰しており、米テレビ局の発言力やIOCの商業主義が今後も高まらないか気がかりだ。

 今回の大会で注目されるのは、連日のように20種目以上の決勝がある日程が組まれたことだ。序盤から終盤まで日本勢の有望種目が途切れなく続く。特に終盤の8月6~8日はメダルラッシュの可能性が指摘されており、期待も膨らむ。

 午前決勝となる競技団体関係者からは「海外では時差のあるところでやるのだから対応していくだけ」と冷静な受け止めがあるが、「午前中の暑い盛りになった」「コンディション調整が要る」との戸惑いがあることも心に留めておく必要がある。

 決勝が午前中になることで「どれだけ観客を集められるか心配」と集客への影響を懸念する声もある。

 大会開催まであと約1年3カ月となった。競技実施にあたりIOCは、選手がベストな体調で実力を発揮できる環境を主導して整えることに注力してもらいたい。組織委や各競技団体も万全の対策をとり、負担軽減に向けて努力すべきだ。

【 2019年04月21日 10時59分 】

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