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社説:首相イラン訪問  米にも歩み寄り求めよ

 安倍晋三首相がイランを訪問し、ロウハニ大統領、最高指導者のハメネイ師と相次ぎ会談した。

 イランと米国の対立が深刻化する中、武力衝突を避けるよう緊張緩和に向けた対応を安倍氏が要請したのに対し、ロウハニ師は米国による原油禁輸制裁が原因として、停止を働き掛けるよう訴えた。

 現職首相のイラン訪問は41年ぶり、最高指導者と会うのは初めてで、米・イラン双方との友好関係を生かして仲介役を買って出た形だ。対話による解決を直接働き掛けた意義は小さくないが、緊張緩和の道筋は見えていない。

 安倍氏は、トランプ米大統領に結果を伝え、今月末の20カ国・地域(G20)首脳会議で来日する同氏と対応を話し合う。根深い対立をほどくのは難しいが、他の主要国の協力も得て中東の安定に貢献できるか、手腕が問われよう。

 安倍氏は会談後、緊張緩和に向け「できる限りの役割を果たしたい」と改めて決意を示した。

 ハメネイ師から「核兵器製造の意図はない」、ロウハニ師からも「核合意を継続する」意思を確認できたとする一方、事態打開には米国による原油禁輸制裁の停止が必要との条件を付けられた。

 イランが禁輸停止を譲れないのは、厳しい国内状況からだ。国家収入の4割を頼る原油輸出が激減し、通貨暴落や物価高騰などで経済は疲弊。穏健派のロウハニ政権への国民の不満が高まり、ハメネイ師らの対米強硬論が強まっている背景がある。仲介役には重い宿題が託されたといえよう。

 安倍氏のイラン訪問は、4月の訪米時にトランプ氏から要請されたという。ロシアとの領土交渉や北朝鮮との直接対話が手詰まりとなり、国際課題への貢献姿勢をアピールする狙いだろう。

 トランプ氏とは、先月の訪日時と、直前の電話会談で打ち合わせをしたが、イラン側を動かす新たな提案はなかったとみられる。

 とはいえ、米・イラン双方にとって日本の橋渡しは貴重だ。これまで欧州が担ってきたが、核合意を主導した英仏独とも政権基盤が揺らぎ、トランプ氏とも距離を置く。イランは、核合意履行の一部停止発表で欧州の仲介を期待したが、英仏独の動きは鈍いままだ。

 日本は原油の8割を中東からの輸入に頼り、情勢の安定は極めて重要だ。米国の一方的な核合意離脱と圧力一辺倒では事態を悪化させるだけだと、トランプ氏にも対話解決への歩み寄りを促す役割が求められよう。

【 2019年06月14日 13時00分 】

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