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金融機関から高額出金の資産情報入手か 巡査長の多額詐欺

高橋容疑者が勤務する山科署の捜索を終え、駐車場を出る捜査車両(15日午後7時5分、京都市山科区)
高橋容疑者が勤務する山科署の捜索を終え、駐車場を出る捜査車両(15日午後7時5分、京都市山科区)

 金融機関から提供された情報を基に1千万円を超える多額の現金をだまし取ったとして、京都府警山科署地域課の巡査長(38)が詐欺容疑で逮捕された。全国各地の金融機関では、特殊詐欺被害が疑われる取引について、警察に即時通報する仕組みが定着。被害を水際で防ぐ有効策として威力を発揮する情報共有の仕組みを現役警察官が悪用した形で、府警幹部は「全国警察を挙げての取り組みが、悪意ある者の手でひっくり返された」と憤った。

 府警によると、逮捕された巡査長は昨年11月、京都市伏見区内で1人暮らしをする男性(78)の自宅を訪れ、「現金を預かって保管する」とうそを言って、2回に分けて現金計1180万円を詐取したとされる。事件直前、男性は金融機関で高額の現金を引き出そうとしており、金融機関から京都府警に「特殊詐欺被害の可能性がある」との通報が寄せられていた。

 巡査長は通報への対応で金融機関に出向き、男性から出金理由などを聴いていた。警察官の身分を示して男性を信用させた上、職務を通じて得た資産情報を悪用した可能性が高いという。

 警察庁の公表資料によると、特殊詐欺の認知件数はここ数年、1万5千件前後と高水準で推移し、昨年の被害総額は360億円超に上った。全国の警察は詐欺被害の「芽」を早期に摘もうと、金融機関との連携を強化。窓口職員による声掛けや現金自動預払機(ATM)の利用制限だけでなく、近年は高齢者が高額の払い戻しをした場合に即時通報を要請している。特殊詐欺グループに手渡しで現金をだまし取られる被害が多発しているためで、連絡を受けた警察官は金融機関に急行するなどし、顧客から出金理由など事情を聴き取り、被害を未然に防ぐ取り組みだ。

 即時通報の仕組みは京都でも広がっており、交番勤務員らが顧客への聴き取りを通して事件性の有無を確認し、引き継ぎ書を作成して同僚間で情報を共有している。

 府内の交番に勤務する男性警部補は「引き継ぎ書には高額出金があったことだけでなく、対象者が独居だったり、認知症の疑いがあるかどうかなど、かなり細かな情報を書き込むこともある」と説明する。

 府警関係者によると、取引情報が無断で通報されることに拒否感を抱く顧客もいることから、情報共有に二の足を踏む金融機関もあるという。「地元の銀行や顧客に対して被害抑止への理解を求め続け、ようやく定着してきた取り組みだった」と指摘する。

 それだけに全国警察が展開する特殊詐欺対策の在り方を根底から覆しかねない事態に、府警幹部は「ありえない不祥事だ。巡査長個人の資質の問題とはいえ、組織としても批判を浴びて当然だ」と語った。

【 2019年06月16日 10時20分 】

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